オヤスミナサイ~愛と死を見つめて~
シングルマザーの家庭に育ったという。
 
大学から奨学金をもらっているらしいけれど、それでも足りなくて、バイト三昧だ。
 
できるだけ、学校には行っている――私や帆乃香や鈴には、耳の痛い話だ。
 
苦労しなくても大学に行けて、それなのに極力サボっている。
 
想太とは反対のことをしている。
 
彼を思うと、のうのうとしている自分がちょっと恥ずかしくなる。

「バイト、きつくない?」

「大丈夫だよ」
 
ふあああ、と想太はそこで大あくびをした。
 
寝ていたところ、申し訳なかったな、とちらっと思う。
 
午前中の公園は、静かだった。
 
子どもたちは、学校や幼稚園に行っているのだろう、姿が見えなかった。
 
ベビーカーを押したお母さんたちが談笑しているのが、遠くに見えた。
 
公園の遊具は所在なげだった。
 
早く子どもたちが来るのを、今か今かと待っているようだった。
 
すずめたちが地上に降りて、砂を突いている。
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