好きになんか、なってやらない
 
《今何やってんの?》
「同期飲みです」
《いいねー。俺も行っちゃおうかなー》
「やめてください」
《だからその即答、やめてくれない?》
「悩む必要ないんで」


「ちっ」と舌打ちをする音がかすかに聞こえた。

ほんと、私たちはいったい何電話してるんだろう……。
お互いにイラつく対象のはずなのに……。


「用はこれだけですか」
《まあ……》
「じゃあ、切りますよ」
《……なあ》
「はい?」


さっさと切ってしまおうと、切り上げた瞬間、再び呼びかけられた言葉。
放しかけた携帯を、再び耳に押し付けた。


《お前、休みの日とか何やってんの?》
「とくに何も……」
《……あ、そう》


聞いて、それだけ。
いったい、何が聞きたいの?


《じゃあな》
「はい」


そして、今度こそ携帯は切れた。


ツーツーと聞こえる電子音。
最後の言葉の意図も結局分からなくて、そのままみんなのいる席へと戻った。
 
< 100 / 301 >

この作品をシェア

pagetop