好きになんか、なってやらない
「さて、そろそろお開きにしよっか」
「そだねー」
11時を過ぎて、解散の雰囲気。
さすがに終電も近いので、ここから二軒目という流れはない。
同期なので、みんなできっちり割り勘。
会計を済ませて、お店を出た。
「アンタって、ほんと顔色一つ変わんないよねー」
「そう?」
隣に並んだ真央が、私の顔を覗き込みならそう言った。
真央自身は、頬がほんのりピンクに染まっていて、どことなくいつもよりテンションが高い。
「明らかに一番飲んでたじゃん!なのに、済ました顔しちゃってさー」
「しょうがないじゃん。体質なんだから」
どうやら私は、お酒に強い体らしい。
昔から、どんなに飲んでも酔うことを知らず、冷静に頭が働いている。
それが、異性からしてみたら、つまらない女みたいだけど。
「さてと……」
もう、さっさと帰ってシャワー浴びたい。
そして明日は、一日ゴロゴロ過ごすんだ。
「玲奈っ!」
だけど私の計画は、あっという間に打ち砕かれる。
予想外の自分の名前。
振り返ったそこには、信じられない人物が立っていた。