好きになんか、なってやらない
10章 ドキドキ
ブー、ブー……
「……ん…」
部屋に響きわたる、振動の音。
いつから鳴っているか分からないそれに、私はゆっくり意識を覚醒させられた。
電話?
いつまでも響き続ける携帯電話。
メールやラインなら、一回のバイブ音で終わるはずだ。
だけどそれは、いつまで経っても響き続けていて……
「うわ……」
拾い上げたディスプレイに映る名前に、思わず声が漏れた。
【岬凌太】
昔、強引に交換させられた番号。
ラインはよく来ていたけど、電話が来ることは稀だった。
今日は土曜日。
どうしてこんな休みの日まで、彼の存在からスタートさせないといけないんだろう……と思いながらも、いっこうに止まないバイブ音に、終止符を打った。
「……もしも……」
《やっと出たか》
私が話しきる前に遮った言葉。
受話器越しに聞こえる彼の声は、若干苛立ちを感じさせた。