好きになんか、なってやらない
「なんの用ですか。こんな朝から……」
《確認》
「なんの?」
《おまえ、今どこにいんの?》
「え?家ですけど」
《自分の?》
「それ以外、どこだって言うんですか」
まったくもって、趣旨が分からない。
確認している意味も、その目的も、相手が若干苛立っているのも……。
ピンポーン……
「あ、誰か来たみたいなんで切りますね」
《ん》
めずらしく、聞き分けのいい返事。
切るなんて言ったら、絶対にゴネるかと思った。
そもそも、用件とか何も聞いてないし。
不思議に思いながらも、インターフォン先の相手をこれ以上待たせるわけにもいかないので、手に持っていた携帯電話の電源ボタンを押した。
切れる携帯。
それと同時に、部屋のインターフォンの受話器を手に取った。
「はい?」
《開けて》
「……は?」
理解するまで3秒。
インターフォン先に聞こえた声は、
今まさに携帯で話していた声と全く同じ声だった。