好きになんか、なってやらない
「あいつのことは名前で呼ぶのに」
「あいつ?」
また出た。
「あいつ」という三人称。
それだと、いったい誰を指しているのか分からない。
けど、さっきの話だと、「あいつ」というのは……
「陽平?」
「……」
確認を取ろうと、名前を出した瞬間、
ぐるりと体が反転させられた。
「っ……」
途端に口づけられる唇。
洗面台に体を押し付けられて、抵抗しようとする腕を掴まれた。
やだ……
何……
「やっ……」
必死にそむけた顔は、なんとか彼の唇を拒み、抵抗の声を上げた。