好きになんか、なってやらない
背けた顔は、岬さんの手によって戻され、
再び深く口づけられてしまう。
嫌なはずなのに、頭がぼーっとしてきて
だんだんと受け入れてしまいそうな自分の体に嫌気がさした。
「い、いい加減にしてくださいっ……」
今持つ最大限の力を振り絞って
ドンと岬さんの体を押した。
私の吐く、荒い息遣いが洗面所の中で響く。
「………ごめん」
何か言い返されるかと思いきや、うなだれるように岬さんは一言謝った。
力をなくした彼は、スッと足を踏み出すと、そのまま玄関へと向かって行き帰ろうとしていた。
こんな男、さっさと帰ってもらいたい。
危険すぎる。
部屋に入れたことが間違いだった。
そう思っているはずなのに……
「………私、まだ岬さんがここに来た目的、理解出来てないんですけど」
このまま彼を帰らせてはダメだって
心の奥底で叫んでいた。