好きになんか、なってやらない
 
背けた顔は、岬さんの手によって戻され、
再び深く口づけられてしまう。


嫌なはずなのに、頭がぼーっとしてきて
だんだんと受け入れてしまいそうな自分の体に嫌気がさした。



「い、いい加減にしてくださいっ……」



今持つ最大限の力を振り絞って
ドンと岬さんの体を押した。


私の吐く、荒い息遣いが洗面所の中で響く。


「………ごめん」


何か言い返されるかと思いきや、うなだれるように岬さんは一言謝った。

力をなくした彼は、スッと足を踏み出すと、そのまま玄関へと向かって行き帰ろうとしていた。


こんな男、さっさと帰ってもらいたい。
危険すぎる。
部屋に入れたことが間違いだった。


そう思っているはずなのに……




「………私、まだ岬さんがここに来た目的、理解出来てないんですけど」




このまま彼を帰らせてはダメだって
心の奥底で叫んでいた。
 
< 115 / 301 >

この作品をシェア

pagetop