好きになんか、なってやらない
強気に言い切って、相変わらず可愛くない。
けど、これが私の、精一杯の彼の引き留め方。
小さく落ち込む彼の背中を見ると、胸がズキンと痛み
拒んでしまった自分にたいして、罪悪感すら湧き出てきた。
あのままキスをされていてはダメだと思った。
流されてはダメだと思った。
だって確かに私は、
岬さんのキスを「嫌だ」とは感じてなかったから……。
「確認。私がここにいるかどうかを見に来たって言ってたけど、どこにいると思ったんですか?」
「……」
腕を組み、壁にもたれかかる。
靴を履こうとしていた岬さんが、ゆっくりと振り返った。
「わかんだろ。俺がさっきから、一人の人物にこだわってるんだから」
それを言われてから、ようやく頭の中で整理がされた。
さっきから、岬さんが気にしている人物と言えば、ただ一人。
「お前が昨日、飲み会の帰りに男が迎えに来たって香織ちゃんから聞いてて……。
だからそのままお持ち帰りされてるんじゃないかと思って、確かめに来たんだよ」
そう言って、岬さんはふてくされ顔をして顔をそむけた。