好きになんか、なってやらない
 
ああ、なんでだろう……。

ふいと顔をそむける岬さんの顔を見ていると
きゅんと胸が締め付けられるような感覚になる。


自分の中に眠る母性本能がくすぐられるような……
女の子としての自分がときめいているような……


自分でもよく分からない感覚。



「……バカじゃないですか。
 私がお持ち帰りされるわけ、ないじゃん」

「わかってるよ、んなの」



可愛くないことばかり言ってしまう自分にさえ、腹が立つ。


こんなことを言いたいんじゃない。
心配して、家にまで来てしまう岬さんに言いたいことは……



「何?そんな顔してるとまた襲うぞ」

「……」



どう答えたらいいのかも分からなくて
ただじっと岬さんの顔を見上げていた。


いつもなら、「バカじゃん」なんて切り返すのに
そんな憎まれ口ですら、もう出てこなくて……




「……ほんと、お前ってムカツク」




そんな私を、岬さんはぎゅっと抱きしめた。
 
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