好きになんか、なってやらない
何…ズキンって……。
再び感じた、胸への衝撃に、とっさに抑えて前を向き直した。
べつに、彼がどこで女の子と会おうが関係ない。
もともと、彼が女たらしであることは、重々承知だ。
岬さんが女遊びをしなくなったのは、私を落とすための一つの作戦なだけであって、
その目的がなくなった今では、ああやって女の子と遊ぶのを再開させてたっておかしくないんだ。
関係ない。
当たり前。
だからなんとも思ってない。
なのに……
「……」
つい振り返ってしまった先には、岬さんの腕をとって歩く彼女の姿があって……
ズキンズキンズキン……
胸の痛みは、より一層強くなるばかりだった。
なんでこんなに胸が痛いの?
なんでこんなに……涙がこみ上げてくるの?
だってそれじゃあ、まるで私が……
ブー、ブー……
「?」
途端に震えた携帯。
咄嗟にバッグから取り出すと、一人の名前が表示され、着信がかかってきていた。