好きになんか、なってやらない
 
これで、よしっと……。


時間も22時を過ぎたところで、ようやくひと段落。
やらなくてはいけないことは終了。

首をカキコキならしながらフロアをぐるっと見渡すと、すでに5分の1くらいの人になっていた。


ってか、いないじゃん。


目に留まった一つの席。

遠く離れた企画部署の、岬さんの席だ。


近くの席にはまだ人がいるものの、岬さんの席には誰もいなく、パソコンももうなくなっていた。


誘っておきながら、一言も言わずに帰ったのね。


べつにそんなこと、どうでもいいけど、なんかムカつく。
ムカついている自分に、さらにムカつくけど。


ブンと首を振って、最後に【退出】のボタンを押すと、私もパソコンを閉じた。


まだ残っている人に挨拶をし、エレベーターに乗り込んだ。

今日は金曜だから、家帰ったらお酒も飲んじゃおう。
チョコだけじゃ物足りないから、おつまみも帰りに何か買って……。


チンという音とともに、エレベーターが開く。

金曜の夜の楽しみ方を頭の中で予定を立てながら歩いていると……



「遅すぎ」

「……」



最悪だ。

もう逃れられたと思っていた男が、エントランスで待ち伏せていた。
 
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