好きになんか、なってやらない
 
「たまたまですよ。
 私の行く先に、岬さんたちがいただけです」

「へー……。
 それで今、機嫌悪いの?」

「べつに機嫌悪くなんかっ……」


予想外の返しに、全否定しようと顔を上げると、そこにはなぜかニヤニヤと笑っている岬さん。

ムカつく……。
その笑顔がムカつくっ!!


「ヤキモチ妬いたんだ?」
「妬いてない!」
「でもイラッとしてんだろ。
 昨日女と遊んで、今日は自分で、って」
「違うから!私はあなたが、軽い気持ちで今でも私を誘ってくるからっ……」


……軽い気持ちで?
自分の言葉に、思わずハッとした。


違う。
そんなんじゃない。
腹が立ってるのはそうじゃなくて……



「だから軽い気持ちで誘ってないっての」



気づけば、さっきまでの面白そうに笑っている岬さんはいなくなっていて……
じっと見つめる人を見透かしてしまいそうな茶色い瞳。


ああ、どうしてだろう……。
またどうしようもないほど、心臓が加速していく。
 
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