好きになんか、なってやらない
さっきまで抱えていた、胸のモヤモヤがいっきに晴れていく。
好きなんかじゃないのに
こんな男……大嫌いなはずなのに……
どうして泣きたくなるほど
胸がギュッと締め付けられるんだろう……。
「……それって、私のことが好きなんですか?」
「お前、それ聞く?」
心の中は、キャパオーバーしているくらい混乱しているのに
出た言葉はいたって冷静。
パニックになりすぎて、勝手に飛び出してくる言葉だ。
「さぁな。お前がもっと素直になったら教えてやるよ」
人を試すように、にやりと笑う。
ズルイ。
ずるすぎる。
この男は、わけも分からず人をドキドキさせるんだ。