好きになんか、なってやらない
12章 罠
「おはよー、玲奈」
「おはよう」
朝、出勤してすぐに会社のメールチェックをしていると、大あくびをしながら真央が出勤してきた。
「眠そうだね」
「昨日、お昼過ぎまで寝ちゃって……。だから夜全然寝れなくてさ、結局寝れたの4時近く」
「バカだね」
「うるさい」
私の鋭い突っ込みにも、真央はもう慣れたものだ。
半笑いで言い返すと、もう一度大あくびをしながらパソコンを起動させていた。
「あ、凌太さんだ」
「……」
送られてきたメールに返信を打っていると、隣から真央が反応している。
ピクリと私も反応してしまったけど、何も気にせず再びタップする手を動かした。
「おはよ」
「おはようございますー」
「……おはようございます」
いったい何事だ。
普段なら、そのまま自分の席へ向かって行くはずなのに、岬さんはわざわざ通路を曲がると、私の席のもとへと来た。
笑顔で挨拶をする岬さんと真央とは逆に、無表情のままパソコンの画面を見て挨拶を交わす私。
「挨拶をするときは、人の目を見て言おうねー」
「ちょっ……」
突然回る視界。
グルンと椅子を回され、あっという間に目の前には岬さんの姿へとなってしまった。