好きになんか、なってやらない
オシャレな色合いのカクテルと、食べるのがもったいないと感じるくらいの料理。
いちいち小洒落ていて、ちょっと落ち着かない。
「乾杯」
チンと小さく音を立てて、サクランボの入ったカクテルに口をつけた。
普段はビールや日本酒ばかりだけど、今日は店に合わせてカクテルを選んだ。
「おいしい……」
「でしょ?ここの酒は本物だから」
思わず漏れた言葉に、得意げに応える陽平。
たまにそうやって見せる、無邪気な笑顔はやっぱり憎めない。
「あの時とは全然違うよなぁ……」
「え?」
「ほら。付き合ってた時は、お互いに制服着て、寄るのはファーストフードとかでさ。
テーブルに並んでるのは、ポテトとシェーキ」
「そうだね。もう7年も経ってるんだもんね」
「お互いに老けたな」
「それを言わない」
「ははっ……」
気づけば、構えてた自分も打ち解け、昔の話を笑って話してた。
楽しかったあの頃。
隣にいた幸せ。
ただ、陽平と過ごすあの時間が、何よりも嬉しかった。
けど……
「ほんと……ごめんな」
ふいに陽平の声のトーンが下がった。
流れ続けるBGM。
目線だけを、陽平へと向けた。