好きになんか、なってやらない
「なんつーか……あの時の俺って、自分のプライドが大事で……。
玲奈のこと、本当に自分から好きになって告ったのに、周りの目ばっか気にしてさ……。
友達に、遊びなんだろ?とか言われたら、頷くことしか出来なくて……。
玲奈を傷つけるようなこと、言っちまった……」
「……」
初めて聞かされた、あの時の陽平の気持ち。
どこまでが本心なのかは分からない。
だけど陽平の顔は、心から後悔しているように歪んでいて、前髪をくしゃっと握った。
「もういいよ。本当に……。
私はもう気にしてないから」
これ以上、陽平の苦しむ顔を見たくなかった。
と言えば、ただの綺麗ごとだ。
気にしてないと言ったのは、本心。
少し前の私だったら、今でもずっと引きずってた。
だけど今の私は、陽平を恨む気持ちとか消えかかっていて……
それはきっと、男の人へのトラウマを消してくれている人がいるから……。
「あのさ……。一つ確認したいんだけど……
玲奈って、本当にあの男と付き合ってんの?」
陽平は、正直に過去の過ちや気持ちを話してくれた。
だから私も、嘘をついてはいけない。
「付き合ってないよ。
本当は、ただの会社の先輩と後輩」
正直に話したのは、決して陽平に誤解されたくないからとか、そういった理由ではない。