好きになんか、なってやらない
 
「とりあえず、タクシーで送るから。先乗って」
「あり、がとう……」


どうしてだろう……。
体がすごくふわふわする。

今までどんなにきついお酒を飲んだって、自分をコントロールできなくなるほど酔ったことなんかなかった。

今日飲んだお酒だって、カクテルなんだからそこまで度数は強くないはず。
それなのに自分の意識は朦朧としている。


「寝てていいよ。着いたら起こすから」
「だいじょうぶ……」


口ではそう言っているのに、瞼が勝手に閉じていく。


ダメだ……
絶対にここで寝ちゃ……。


必死に頭を覚醒させようと強く意識を持つ。

だけどそんな抵抗は虚しく終わって……






「………やっと寝たか。

 すみません、運転手さん。
 行き先を変えてください」



頭の上から、さっきとはうってかわった冷静な声。

だけどそれに反応するほど、私の気力はもう残っていない。


それを最後に、すぐに私は深い眠りの中へと入っていった。
 
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