好きになんか、なってやらない
 


   ***


「ふぅ……」


陽平は、抱きかかえていた玲奈をドサッとベッドへとおろした。

紺と青ばかりの部屋。
そこは決して、玲奈の部屋なんかではなかった。


「ほんと、なかなか言うこと聞かない奴だな」


深い眠りについている玲奈を見下ろしながら、ネクタイを緩める。
その顔は、言葉とは裏腹に喜びに満ちていた。


玲奈がこんなにも酒で深い眠りについてしまったのは、
先ほど玲奈がトイレに行っている間に、混入されていた睡眠薬のせい。

本来なら10分もしないうちに効くはずの薬は、玲奈の維持によって30分もかかった。
だけどようやくそれも無駄なあがきに終わって、今目の前には無防備な姿をさらけ出している。


「やっと手に入れられるな」


シャツだけになって、ベッドへ踏み出す陽平。

だけどそれを遮るように、部屋にバイブ音が響き渡った。


無視をしようと思ったけど、面白い相手かもしれない。
一つのことを思い浮かべ、陽平はバイブが響く、玲奈の鞄を漁った。


「もしもし?」
《……誰だ、お前》


ディスプレイに表示された名前は、予想通りの男の名前。

含み笑いをしながら、当たり前のように電話に出ると、当然相手は喧嘩腰に突っかかってきた。
 
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