好きになんか、なってやらない
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「ふぅ……」
陽平は、抱きかかえていた玲奈をドサッとベッドへとおろした。
紺と青ばかりの部屋。
そこは決して、玲奈の部屋なんかではなかった。
「ほんと、なかなか言うこと聞かない奴だな」
深い眠りについている玲奈を見下ろしながら、ネクタイを緩める。
その顔は、言葉とは裏腹に喜びに満ちていた。
玲奈がこんなにも酒で深い眠りについてしまったのは、
先ほど玲奈がトイレに行っている間に、混入されていた睡眠薬のせい。
本来なら10分もしないうちに効くはずの薬は、玲奈の維持によって30分もかかった。
だけどようやくそれも無駄なあがきに終わって、今目の前には無防備な姿をさらけ出している。
「やっと手に入れられるな」
シャツだけになって、ベッドへ踏み出す陽平。
だけどそれを遮るように、部屋にバイブ音が響き渡った。
無視をしようと思ったけど、面白い相手かもしれない。
一つのことを思い浮かべ、陽平はバイブが響く、玲奈の鞄を漁った。
「もしもし?」
《……誰だ、お前》
ディスプレイに表示された名前は、予想通りの男の名前。
含み笑いをしながら、当たり前のように電話に出ると、当然相手は喧嘩腰に突っかかってきた。