好きになんか、なってやらない
 
「これで悪い虫もつかないだろ」


ぽつりとつぶやくと、玲奈のバッグの中へ携帯を戻していく。
電源を落とされた携帯は、それ以上反応することはない。


もう一度ベッドへ戻り、玲奈の頭を撫でた。


手に入れたかった女。
忘れられなかった女。


俺のプライドを傷つけた女……。


眠っている間に、玲奈を自分のモノにしてやろうと思っていたけど、さっきの電話で気が変わった。

あの男には釘を刺しておいた。
だから今、そんなに焦る必要はない。

それよりも、決定的に玲奈を落とすには、力づくなど無意味だと気づいたから……。

こういう女は、精神的に落としていかないと意味がない。
弱みを握ったところで、言うことを聞くような女ではないから……。


「おやすみ。玲奈」


陽平は玲奈の髪にキスをすると、一人シャワーへと向かって行った。



わざと真摯なふるまいをとることが
策略の一つだと企んで……。
 
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