好きになんか、なってやらない
「ん……玲奈…?起きたんだ……」
「あの……なんで私……」
起こしたら悪いとも思ったけど、今自分が置かれているこの状況の意味を早く知りたくて、たまらず陽平に質問を投げかけた。
陽平はゆっくりと身を起こすと、まだ眠そうな目をこすって私の顔を見上げる。
「覚えてない?昨日、酔ってタクシーでそのまま寝ちゃったんだよ」
「……あ…」
言われてみれば、だんだんと思い出されていく。
昨日はなぜかすごく眠くなって、普段酔ったりなんかしないのに、自分の意思とは関係なしに、どんどん睡魔に襲われていった気がする。
「家まで送ってったんだけど、結局寝ちゃったからオートロックとか分かんなくて……。起こしても全然起きねぇし。
だから悪いと思ったけど、俺んちに連れきたってわけ」
「そう、なんだ……ごめん…」
事情を知って、急激に申し訳なさがこみ上げた。
送ってくれたのにも関わらず、対処しきれず自分の家にまで連れてきてくれただなんて……。
しかも私をベッドに寝かせ、自分はソファーで寝てる。
もちろん私は、しっかりと服を着ていて、何か手を出されていた気配もない。
ピピピ……と、部屋に響く電子音。
音の発端は、陽平の携帯のアラームのようだ。
「もう起きる時間か……。
玲奈、シャワーくらい浴びてったら?帰る時間とかないだろ」
「……うん。ありがとう」
それでもなお陽平は優しく気遣ってくれて、今までしてきた自分の態度が、少しだけ恥ずかしくなってしまった。