好きになんか、なってやらない
「タオル、ありがとね」
「全然」
ささっとシャワーを軽く浴びて、時間をかけずにすぐに出た。
もとから遅いほうではない。
けど、時間が時間だし、人の家ということもあってより早く済ませた。
「何時に出るの?」
「8時くらい。あと30分あるから」
「そっか」
時計の針は、もうすぐ7時半を示そうとしている。
8時なら、陽平と同じ時間に出て、ちょうどいい時間に出社できるだろう。
私のあとに陽平もシャワーを浴びに行って、少し手持無沙汰になった。
そのまま服に着替えたし、化粧だってもとからしてない。
鞄の中身はそのままだから、会社に必要なものは入っている。
「あれ?」
その時、ようやく携帯を開いた。
だけど落ちている電源。
充電が切れたんだろうか?
そう思って、電源を入れてみたら、残量はまだ60%もある。
酔っぱらって消しちゃったのかな……
なんとなく腑に落ちないまま、携帯を再び鞄の中にしまった。