好きになんか、なってやらない
「なんか不思議だな。朝こうやって玲奈と過ごすとか」
「そうだね」
本当に不思議すぎる。
つい最近まで、あんなに恨んでいた相手と、一緒の朝を迎えている。
とてもじゃないけど信じられない。
「でも俺は……ずっとこうなることを夢見てた」
変わる声色。
ドキッと構えてしまう。
答えを今聞かないとか言いながら、こうやって何度も迫ってくるのは卑怯だ。
「……そろそろ出たほうがいいんじゃない?時間だよ」
これ以上、陽平の眼差しを真正面から受けるのに耐えられなくて、はぐらかすように立ち上がった。
一人玄関へ向かおうと、部屋のドアノブに手をかける。
「……」
「逃げないで」
だけどそれを阻むように、陽平が後ろから抱きしめてきた。