好きになんか、なってやらない
ぎゅっと抱きしめられる腕。
背中越しに伝わる陽平の体温。
ドキドキと、私の心臓も高鳴り始めていく。
「最低だったよな、過去の俺……。
でも……やっぱり玲奈を忘れることができなくて……。
再会したとき、もう一度俺にチャンスをくれたんだって思った。
だから今度こそ、このチャンスを無駄になんかしない。
周りの目もプライドも関係ない。
玲奈、もしもあの時のことをトラウマに感じてるんだったら……そのトラウマ、俺に治させてくれないか?
俺がこれから、全力で玲奈を愛すから」
「……」
耳元で囁かれる低い声。
7年前のあの時ですら、ここまで言われたことはなかった。
今度こそ……
ううん、本当はあの時も
陽平は本気で私を好きでいてくれていた。
ただ、自分のプライドが最低なことをもたらしていただけ。
それならもう一度、彼を信じてみてもいいんじゃないのだろうか……。
「………陽平…」
私はそっと、抱きしめる陽平の手に自分の手を重ねた。