好きになんか、なってやらない
 
大好きだった手。
私よりはるかに大きい手。

この手に抱きしめられることが嬉しくて
彼にすべてを委ねていた。


あの日に戻れるのなら
ためらいもなく彼を愛してた。


けど……





「ごめん」





私はその手を、そっと振りほどいた。



ほどいた手からすり抜け、一歩下がって彼の顔を見上げる。

目を丸く見開き、私をじっと見つめている。



ドキドキしているのも事実。
全く惹かれていないと言えば嘘。


でも今抱きしめられたこの瞬間、
気づいてしまった。



今の私が、
抱きしめられて胸がぎゅっと締め付けられるのは……



(玲奈……)



憎たらしくて全く読めないけど

うざいくらい私に付きまとってくる彼だ。

 
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