好きになんか、なってやらない
 
「やっぱり私は、この先どうやっても、陽平を好きになったりはしない。
 今の私の心を占めているのは、あなたじゃないから」

「……」

「ごめんね……。
 陽平がここまで私を想ってくれたの、嬉しかったよ」


最後まで言い切って、
一人で陽平の部屋から出た。


何も言い返さなかった陽平。

あんなに過去を悔いて、必死につなぎとめようとしてくれたけど……
もう私には手遅れなんだ……。



だって今、
誰よりも岬さんに会いたいと思ってしまっているから……。





   ***


「くそっ……!」


ダン!と壁を打ち付ける音。

玲奈が去って、陽平は堪えきれず壁を殴った。


せっかく人が堪えて、真摯に対応してやっというのに、するりとすり抜けていく玲奈。
こんなことなら、力づくで抱いてしまえばよかった。


「……まあ、お前がアイツのところに行こうとしても、向こうはもう、俺に抱かれたと思ってるけどな」


陽平は、すでにいなくなった玲奈の残像を追いながら、皮肉交じりに微笑んだ。
 
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