好きになんか、なってやらない
「会議は以上です。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
週に一度ある、総務部の定例。
今日はほとんど、上の空になってしまった。
他の人すべてが会議室が出たところで、私もようやく重たい腰を持ち上げた。
今日は急ぎの仕事もないし、定時で帰ろう……。
そんなことを思いながら、会議室を出ると……
「っ……」
グイと引かれた腕。
気づけば私は、隣の会議室へと引きずり込まれていた。
「み、岬さん……」
「……」
私の腕を引いたのは、岬さんだった。
引きずり込まれた会議室は、少人数制の会議室。
外からはうかがえることが出来ない、密室空間だ。
「なん、ですか……?」
なんとなく、今岬さんと顔を合わせるのは気まずい。
何もなかったとは言え、私は昨日、陽平の家へ泊まってしまったのだ。
べつにそれにたいして、岬さんに言い訳する必要なんてないけど。
「昨日、本当に誰と飲んでた?」
だけど岬さんは、私を追いつめるように答えにくい質問を投げかけた。