好きになんか、なってやらない
 
「ゃっ……っ」


離そうと抵抗しても、岬さんが掴む腕は強すぎて
私の力なんかではビクともしなかった。


強引に割って入ってくる舌も、ただ逃げ惑い、受け入れるしか出来なくて……



「……はぁっ…」



ようやく離された時は、
自分の身に何が起きたのか理解するため、ただ岬さんの顔を見上げることしか出来なかった。


「……なんで…またこんなことするんですか…」
「お前がムカつくから」


ようやく吐き出された言葉に、返ってきた言葉はいつもと同じ。

意味が分からない。
ムカつく相手にキスをする必要なんてあるの?



「だったら、こんな私に突っかかってくるの、やめればいいじゃないですか!!」

「ああ、そうするよ」



イラッとした気持ちから、やけになった買い文句に、
いつもとは別の答えが返ってくる。



「もうお前になんか、構わない」



静かな会議室で、低くつぶやかれた言葉に
胸がえぐられるように痛くなった。
 
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