好きになんか、なってやらない
「吐くって何を?」
「とぼけんな。凌太さんとのことに決まってんでしょ。
何最近の二人。よそよそすぎ」
やっぱり、真央が今日飲みに誘ってきたのは、このことだった。
さっきの黄色い声を発する女子とともに消えたのは、にこにこと笑顔を振りまく岬さん。
女子たちと飲みに行くことは今までもよくあったけど、あんなふうに女たらしみたいな台詞を吐くことはなかった。
しいて言えば、私に付きまとう前くらいだ。
「なんでいきなり、凌太さんは玲奈に近づかなくなったの?」
「……たんに飽きただけでしょ」
これ以外、私も返しようがなかった。
お互いに告白したわけでもない。
ただ、向こうが、突然私に愛想をつかしただけ。
だからもう、昔みたいに変にからかってくることもないんだ。
「そのわりには、アンタのほうが未練たらたらって感じだけど?」
「え……?」
予想外の真央の言葉に、ジョッキに手をかけた動きを止めてしまった。
「無意識?いつも凌太さんが近くを通ると絶対に顔をあげないのに、遠くなると自然と顔をあげてその後ろ姿見つめてんの。
片想いしている中学生みたい」
「な……」
「好きなんでしょ?凌太さんのこと」
あまりに直球で来るその質問に、否定することも忘れ言葉をつぐんだ。