好きになんか、なってやらない
 





「さすがに飲み過ぎたな……」


駅で真央と別れて、一人奥の改札へと向かっていた。

真央とは乗る電車の種類が違うので、改札前からバラバラだ。

明日が土曜日だからって、少し調子に乗りすぎた。
最初は、しばらくお酒は控えようと思っていたけど、相手が真央だということもあり、いつものペースでお酒をオーダー。

明らかに、この前陽平と飲んでいた時よりもずっと強いお酒も飲んでいたのに、やっぱり頭は冴えていた。


あの時、本当になんで寝ちゃったんだろう……。


やっぱりどうも腑に落ちない。
たかだか、カクテル数杯で意識を手離した自分に……。


「もー、何考えてるんですかぁ」


ふと聞いたことのある声に、ピクッと反応をして顔を上げた。

人が多くいる中、そこにいるのは香織の姿。
そして香織がしがみついているのは……


「だって、そんなに酔ってたら危ないでしょ」


今一番逢いたいと思っていた、岬さんだった。
 
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