好きになんか、なってやらない
 
「ゲームオーバーってとこかな」
「え?」


岬さんの口から出た言葉。

その言葉に、香織が首をかしげた。


「玲奈みたいな子が、人を好きになったらどうなるのか気になって追いかけてただけ。
 だけどさすがにもうお手上げってな」

「え、じゃあ……。凌太さんって、玲奈のこと、本気で好きなわけではなかったんですか?」

「そ………ね」


肝心の言葉は、ちょうど目の前を人が横切って聞き取ることは出来なかった。


けど、そんなの、聞かなくたって分かった。
いちいち、香織に真実を話したということは、好きだと答えるわけない。

それにもし岬さんが、私を本気で好きだったとするなら、今こんな結果になっているわけないから……。



「だからゲームはおしまい。もう飽きちゃったから」



その言葉に、また胸がえぐられた。



急に耳が聞こえなくなってしまったかのように、そのあとの二人の会話なんて聞こえなかった。

白黒になってしまった視界の先には、手を小さく振って、改札の中に消えていく香織の姿。
それと同時に、岬さんがくるりと振り返った。



「……玲奈……!?」

「……」



もう……
息をするのも辛い。
 
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