好きになんか、なってやらない
 
金曜日の改札前、
道行く人がみんな見て見ぬふりをしていく。

だけど今の私に、そんなことを気にしている余裕なんてなかった。



唇を離して
真っ直ぐと岬さんを見上げる。

岬さんはまだ驚きの表情をしていて、その彼から一歩下がった。



「これでゲームは終了です。
 攻略、お疲れ様でした」



ぺこりと頭を下げて、
微動だにしない彼の前から走り去った。




改札の中へ消え、ちょうど来ていた電車に乗り込む。

ドアが閉まってホームを見ても、岬さんが追いかけてくることもなかった。



当たり前か……。


少しだけ期待してしまった自分に苦笑して、ドアにもたれかかりながら目を閉じた。




これだから恋なんかしたくないんだ。
 
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