好きになんか、なってやらない
「………え…?」
ようやく吐き出された言葉も
気が抜けそうなほど、間抜けな声。
頭はまるでついていけていないのに
鼓動だけが、ドクドクと速まっていく。
「だーかーらー。
俺も玲奈が好きだって。
これだけ言ってまだ分かんない?」
「……」
分からない。
と言いたいけど、分かってしまう。
彼が私を好きだと言っている。
え、でも……
「本気……ですか?」
「さすがにもう冗談言うほど、人間腐ってねぇよ」
私の最後の疑惑の質問に、彼は苦笑して答えた。
「だって…さっき香織に本気で好きだったわけじゃないって……」
「んなこと言ったっけ?俺はあの時……」
(え、じゃあ……。凌太さんって、玲奈のこと、本気で好きなわけではなかったんですか?)
(そのはずだったんだけどね……)
「気づけば、まんまとハマってる自分がいたって言ったつもりだけど。
もうゲーム感覚で玲奈の傍にいるのはやめにしたって」
「嘘……」
今思い返すと、その肝心の言葉の時に、ちょうど人が通ってうまく聞き取れなかった。
だから勝手に自分はからかわれていただけと決めつけてて…。
ああ、どうしよう……。
さっきとは別の意味で胸がぎゅっと押しつぶされそうだ。
「だから俺の勝ち。
と言いたいけど、共倒れだから引き分けな」
その笑顔が
今となっては胸がきゅんとするほど好きになっている。