好きになんか、なってやらない
「でで、でもっ……やっぱ悔しいっ……」
「なんでだよ。好きな奴に告白されたら、普通嬉しいだろ」
「そう…だけど…………。私が岬さんを好きになっちゃうなんて……」
「ふっ、俺の粘り勝ち。……っつっても、途中かなり諦めかけたんだけどな」
「え……?」
そこまで言うと、岬さんはふと笑顔をやめ、じっと私を見つめた。
瞬間、なんだか自分が追いつめられた気になる。
「お前………。あの男と何かあったんじゃねぇの?」
「え?」
「元彼だよ」
「………陽平…と?」
またここでも、陽平の名前が出てきたので、つい首をかしげてしまった。
思い浮かんでしまったのは、一晩ともに過ごしてしまったこと。
けど、あの日何もなかったのも確かで、私はちゃんと陽平に断りの言葉も伝えていた。
「電話。あいつが出たんだけど」
「何の話ですか?」
「先週の話。お前が朝帰りしてた晩、俺、お前に電話したんだけど」
「え……?」
まるで話が見えなかった。
私が陽平の家に泊まってしまったとき、岬さんが電話をしていたってこと?
でも私は何も聞いてない。岬さんと話した記憶もない。
「電話したらあの男が出て……。
もう自分と玲奈は深い仲になってるから、さっさとお前はひっこめってよ。
あげく、次の日本当に玲奈は、前日と同じ服装のまま出社してくるし。
ああ、完全にあの男の家に泊まってたの、決定じゃん……って。
だから俺は、お前のことを諦めようとして……」
「何それ……。
私、全然知らないんだけど」
一方的な岬さんの発言に、私の頭はただハテナマークが浮かんだだけだった。