好きになんか、なってやらない
あろうことか、自分たちの真後ろの席へと案内される三人組。
一応半個室なので、席についてしまえば中の様子はうかがえない。
向こうは私の存在には気づいていないようだったけど……
「なあ、今のもしかして……」
「……」
私の前にいた凌太は、陽平の存在に気づいてしまったようだった。
「何?どうかしたの?」
「あ……ううん、なんでもないよ」
私たちの異変に気付いた真央が、不思議そうに尋ねてきたけど、今はこの場をややこしくしたくなかった。
もう陽平には、きっぱりこの間断っている。
だからもう絡みはこない。
この場では、完全に他人なんだ。
「それで、どうなったんだよ?元カノとはさ」
だけど嫌でも耳に入ってしまった後ろの会話。
「元カノ」という響きに、ピクンと反応してしまった。
「何?元カノって、陽平さん、何かあるんすか?」
「あー、今こいつね。高校ん時に付き合ってた彼女と再会したらしいよ。
それで落とそうと必死になってんの」
三人の様子から、一人は陽平から話を聞いていて、もう一人は何も知らない。
だけどこの時に再確認した。
陽平は、昔と何も変わってないんだと……。