好きになんか、なってやらない
 
他人にベラベラと話している事実。

でもここまでなら、まだ許容範囲か……。
自分の近況を、友達に話すのはよくあることだし……。


なるべく後ろの会話を耳に入れないようにしているのに、どうやら陽平はちょうど私の真後ろになる位置に座っているらしく、
壁一枚越しに、陽平の声が勝手に耳に入ってきた。


「必死とかやめろよな。
 ちょっと痛い目見させようとしてるだけだから」


ドクン……と、心臓に衝撃がはしった。


優しい顔をしていた陽平が……
後悔で苦しんでいた陽平の顔が……

自分の中で、どんどんと悪魔の微笑みへと変わっていく……。


「どういうことっすか?」

「昔さー。すげぇ地味女と付き合ったことがあって。
 あろうことか、向こうから俺のこと振ってよ」

「地味女って……。
 なんでそんな女と付き合ったんですか」

「そいつ、体だけはイイカラダしてたから、ヤリたかったんだよ」


さーっと、積もっていた信用という言葉が引いていった。



ああ、私は……

またしてもバカな思いをしたのか……。
 
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