好きになんか、なってやらない
 
初めて、パープルのアイシャドーなんて乗せた。
キラキラ光る目元。

アイラインもしっかり入れられて、目が1,5倍増しに見える。
マスカラも何回も塗ってると思ったら、まつげがかなり伸びてるし……。


「なんか……化粧ってすごいですね……」
「それもそうだけど。
 何度も言ってるとおり、お前にした化粧はたいしたことないから。
 もっと自分に自信を持て」
「……」


初めて言われた、自信を持てという言葉。

トクトクと、女の子としてのときめきが、初めて生まれた気がする。


「よし、じゃあ行くぞ」
「え?」


自分の顔をマジマジと見ていると、凌太が私の手をとって立ち上がった。

他の二人もポカンとして見上げている。


「悪いけど、このあとひと騒動起きると思うから、適当に会計済ませておいて。
 今度ちゃんと清算するから」

「ん?ああ」

「玲奈、言いたいことあるんだろ?」

「………うん」


ここでようやく、今の自分の状況が分かった。


メイクをしてくれた凌太。
生まれ変わった自分。

全ては、自分の真後ろにいる最低な男のために……。
 
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