好きになんか、なってやらない
 
さっきまで、足がすくんで立ち止まっていた自分はもういなかった。

メイクの力で自信がついたこともあるけど
今の自分の隣には、凌太がいてくれることを再認識できたから。


このまま言われっぱなしなんて嫌。
舐められているなんて、私のモットーに反する。


キッと前を睨んで、
戦闘モードで立ち上がった。





「でさー、力づくってのも出来たんだけど、それじゃあ犯罪になっちまうじゃん?」


今もなお、バカみたいに武勇伝を語る陽平。
まだ私の存在には気づいていなくて、ヘラヘラと笑う陽平の前の机の上に、ドン!と両手をついた。


「え?」
「こんばんは」


目を丸くさせ、驚きを表情を見せる陽平に、にっこりと笑って挨拶をする私。

他の二人も同じように目を丸くさせていて、私のことを不思議そうに見上げている。


「こんばん………え……れ、玲奈?!」


最初、相手が私だと言うことに気づいていなかったらしい。

途中の顔の変化が、ちょっと笑えた。


「これが噂の彼女?可愛くないっすか?」
「な。冴えない女って言うから、もっとイモっぽいのかと思った」


ぶつぶつと向こうの席からの声が聞こえたけど、それはもう相手にしていなかった。


私の文句をぶつけたい相手は
目の前のこの男、ただ一人だから。
 
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