好きになんか、なってやらない
「ごめんね。全部聞こえてた。アンタの行い」
「え……いや、それは……」
「そうだよね。私みたいな冴えない女を、陽平みたいなイイ男が本気で相手にするわけないもんね。
分かってるよ。だからぜーんぜん怒ってない」
にっこりと微笑み、ズイと顔を近づけた。
至近距離で、陽平の顔をまじまじと見つめる。途中、だんだんと陽平の顔が赤くなっていく気がした。
「あれー?
だけどよくよく見てみると、陽平もたいしたことなかったねー。
私も目が悪くて、勘違いしてたみたい。冴えない男だった」
初めて口にした、陽平の悪口。
ピクリと陽平の眉も動いて、歪んだ顔になっていく。
「ねえ、私はこの先、陽平のこと好きにならないって何度も言ってるよね。
何、自分に脈ありみたいなホラを周りに吹いてんの?勘違いも甚だしいっ。
私はアンタみたいな男、大嫌いなの。
もう金輪際、私の前に現れるなっ!!」
最後に思いきり怒鳴って、陽平に背を向けた。
初めて私に怒鳴られた陽平は、何も言い返すことが出来ず、ただそれを見送っているだけ。
だけどそんな陽平に、凌太が続けて言葉を吐いていた。
「玲奈、いい女だろ。
それに気づかなかったお前はバカ。ま、俺も最初はバカだったんだけど。
この前の電話もお世話様。
いい加減、その中途半端な自信、やめたほうがいいよ」
「っ……」
それだけ言って、凌太も私のあとを追ってきた。