好きになんか、なってやらない
 
「あんな奴なんかで、トラウマ抱えんなよ。
 人生もったいねぇぞ」

「……うん」

「俺がお前に自信つけさせてやるよ」


その言葉は、説得力がありすぎて、逆に何も答えられなかった。


私の肌に、初めて化粧を施してくれた人。
「自信を持て」と背中を押してくれた人。


ずっと自分に自信がなかったはずなのに、少しずつ勇気が湧いてくる。


「玲奈」

「ダメ。今顔見ないで」


そっと体を離されそうになったけど
慌ててぐっと力を入れて、凌太の胸に顔をうずめた。

今の顔は見られたくない。

絶対に……

絶対に。


「なんで?」
「なんでも」
「あ、携帯忘れた」
「え?」
「嘘」
「ちょっ……」


意外な言葉に油断したのが最後。

力が抜けた私の体をぐっと引き離し、凌太は私の顔を覗き込んだ。
 
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