好きになんか、なってやらない





「ふぅ……」


シャワーを浴びて、髪を軽くタオルでふくと、また気を取り直して部屋へと戻った。


「あれ?」


だけど部屋には、さっきまでいたはずの凌太の姿がない。

え、帰ったとか?

一人暮らしのこのマンションに、部屋はただ一つ。
だから他の部屋にいるなんてありえない。


部屋に凌太の姿がないことに不安を感じながら、ただ茫然と立ち尽くしてしまう自分。


やっぱり気が変わって、終電に駆けこんだのだろうか……。
泊まってもかたくなにガードを緩めない私に、呆れつくしたのだろうか……。


「……」


なんだろう。
この漠然とした不安。

一人で部屋にいるなんて当たり前のことなのに……。




「お前、ありえないから」




だけどその不安をかき消すように
私の体は、探していた温もりに後ろから包み込まれた。
 
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