好きになんか、なってやらない
「このタイミングでシャワー行くとかいってなんなの?」
「なん…で……」
不安に押しつぶされそうになっていたことを悟られたくなくて、なんとかいつもの調子で言葉を返す。
後ろから抱きしめる力は緩まることなく、不平をもたらしている。
「日付変わる瞬間に祝うって言ったじゃん」
「え?………あ…」
言われて気が付いた。
ふと顔を上げ、棚に置かれた置時計を見ると、時計の針は0時10分を示そうとしている。
「ムカついたから、トイレに隠れてた」
「バカ、じゃないの?」
「そのバカに騙されて、不安になってたくせに」
「……」
そんなことない。ってきっぱり言い返したかった。
けど、言葉に出して言われ、自覚してしまった思い。
私は凌太が突然いなくなっただけで、こんなにも不安に感じてしまうんだ……。
「泣くなよ」
「泣くわけないじゃん」
「じゃあ、泣かせてあげようか」
「どうやって?」
「さあ……?」
何か仕掛けられるかと思ったけど、凌太は笑って首をかしげるだけ。
意味深……。
いったい何が……
「………え…?」
だけどふと気が付いた。
いつもと同じ部屋の、いつもと同じ物。
だけど唐突に光る、見慣れないソレに……。