好きになんか、なってやらない
 
ゆっくりと歩を進め、その光ったもののほうへ近寄った。

そこには、憎たらしい顔をした黒猫のぬいぐるみ。
凌太からもらった、有難迷惑だったプレゼント。


棚に飾られてあったそれに、キラリと光るもの。


猫のぬいぐるみの首には
今までなかったはずのネックレスがかけられていた。


「何…これ……」
「首輪」
「……猫の?」
「なんでだよ!一応、本物のダイヤだからな」


冗談で言われたから冗談で返したのに、ちょっと本気モードで返された。

凌太は猫のぬいぐるみを取り上げると、かけてあったネックレスを手に取った。


「お前のに決まってんだろ」

「あ……」


そしてそれを、私の首へとかけていく。



「誕生日おめでとう。玲奈」



こんなことで、泣く人なんて単純だって思ってた。

誕生日なんて、大人になればたいしたことのない一日だと思ってた。



だけど26歳になるこの年。
大好きだと思える人に真っ先に「おめでとう」と言われて……




「やっと泣いた」

「っ……る、さいっ…」




涙は自然と、零れ落ちた。
 
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