好きになんか、なってやらない
「ん。できた」
20分かけて出来上がったメイク。
この前、お店でやられたときよりも、ずっと丁寧にされているのが分かった。
どんなふうになったのか、さすがに気になる。
すぐに凌太は、手元にあった少し大きめの鏡を私へと向けると、
「いかがですか?姫」
「……」
茶化すように見せてきたけど
その出来栄えを見て、私は何も言えなかった。
この前と違って、ゴールドが入ったアイシャドー。
キラキラしているけど、すでに秋を感じさせる色合い。
くるりとカールされたまつげも
整わされた細い眉毛も
今まで見てきた自分の顔と、別人に思えた。
「………これ、詐欺だね」
「自分の顔でそう言うなよ」
「だって……」
どう見たって、20分前の自分の顔と違う。
「俺には、玲奈にしか見えないけど?」
「それはそうだけど……」
確かに、自分の顔に化粧をしたってのは分かる。
けど……メイクのすごさを改めて実感していた。
多分、自分でやったって、こんなうまく出来ないし。