好きになんか、なってやらない
 
「え……」


ランチから戻って、思わず出た一言。

机の上に置かれた書類の山。

いったいこれは、なんの嫌がらせですか……。


「あ、伊藤!」


椅子に座ることもせず、その書類の山を見つめていると、
ちょうど出払おうとしているマネージャーが私の名を呼んだ。


「これらの納品手配を頼む!
 悪いけど、急ぎ。週明けまでに手配しといてくれ」

「週明けって……。今日、金曜日ですけど」

「ほんと悪い。
 さらに俺、これから出張なんだわ」

「わかりました。
 マネージャーも気を付けて行ってきてください」

「ああ。頼んだ」


それだけ言うと、鞄を持ちマネージャーはフロアを出て行った。


忙しいのはみんな同じ。
マネージャーも金曜から出張ということは、土曜まで響くようなもの。

だからこんな書類の山……


「ありゃりゃ……。
 これ、今日中に終わらないんじゃない?」

「頑張る」


真央にも心配されたけど、やるしかない。

すぐに席につくと、まずその書類の山を整理した。
 
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