好きになんか、なってやらない
「すみませーん」
そのまま歩いていると、誰かに声をかけられ、凌太と同時に振り返った。
振り返って思わず身構えてしまう。
相手は数人で、明らかに一般の声掛けではない。
「私たち、アムアムという雑誌を取り扱っているものなんですけど、特集ページで『街中の輝きカップル』というものがあるんですね。
よかったら、数枚お写真撮らせてもらってもいいですか?」
「え……」
うわ……。
まさかの雑誌撮影……。
ただの一般特集ページってものだから、たいしたことはないけど……。
アムアムという雑誌は、ファッションに疎い私でも名前くらいは聞いたことある。
「いや、俺たちそういうのは……」
「凌太?」
凌太も断ろうと口を開くと、奥にいたカメラマンらしき人が名前を発した。
まさかの自分の名前を呼ばれたことに、驚きながら顔を上げると……
「押尾さん!」
凌太も知り合いだったらしく、目を見開いて相手の名前を呼んでいた。