好きになんか、なってやらない
「いやー、久しぶりだなぁ!
すっかり大人の男になって……」
「いやいや。といっても、俺ももう28ですからねー。
あの頃のヤンチャなガキとは違いますよ」
どうやら、昔の知り合いらしい。
よく分からなくて、一歩下がって二人の会話を聞いていた。
「お?彼女?」
「あ、そうっす」
「これまた、綺麗な彼女捕まえたなー」
バチッと目が合って、ガハハと大きな口を開けて笑う。
とりあえず、ぺこりとお辞儀をした。
「さすがにもう吹っ切れてたか。美……」
「押尾さん!」
「あ、悪いな。この場で出すもんじゃないな」
押尾さんと呼ばれた人が、何かを話そうとした瞬間、声を荒げて凌太がそれを止めていた。
いったい何を話そうとしたのか……。
「まー、それはさておき。
頼む!俺のメンツに免じて、一つ写真撮られてくんねぇ?」
「それは……」
「今日がその締日でよー。なかなかパッとするカップルが見つからなくて……。
このページ、読者に人気だから、外すわけにはいかねぇんだよ。
な!頼む!!」
パンと両手を合わせて、深々と頭を下げている押尾さん。
見た感じ、凌太よりも10歳くらい年上のはずだ。
凌太もそんな押尾さんの姿を見て、「はぁ…」とため息をつくと、
「玲奈。頼まれてもいい?」
「あ………う、ん…」
困惑しながら、私の許しを請い、それをNOとは言えなかった。