好きになんか、なってやらない
 
「玲奈ちゃん、もっと笑ってね」


結局、本当にそのまま撮影。
といっても、街中で、ただ一緒に並んで何枚か撮る程度。

もちろん、このままモデルとかの話になるものでもない。


だけどこんな人に囲まれて、にこにこ笑えるほど器用なものでもなく、きっと私は不気味に笑った顔でうつっているに違いなかった。




「OK!ありがと」


撮影は10分くらいで終わって、すぐに解放された。
若干周りには人だかりができていたけど、ただの街中撮影だと分かると、大事になることもなくはけていく。


「凌太、サンキューな。助かった」
「いえいえ。押尾さんの頼みなら、仕方ないっすよ」
「あのクソ生意気な凌太から考えたら、ありえない台詞だな」
「なんすか、それ」


きっと二人は、凌太がメイクの仕事をしていた時の仲間。
そしてそれなりに仲がよかったんだと思う。


「今度改めて飲みに行こうぜ。これ、連絡先だから」
「ありがとうございます。ぜひ」
「玲奈ちゃんも、ありがとな」
「いえ。お疲れ様です」


大人の男。というよりは、ワイルドな男の人。

押尾さんは野性児な雰囲気もあり、一言一言に構えてしまっている自分。
それも伝わっているのか、押尾さんのほうからも、必要以上に絡んでくることはなかった。


「じゃ、また」
「はい。編集も頑張ってください」
「はいよー」


そしていくらか雑談をしたあと、押尾さんとは別れた。
 
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