好きになんか、なってやらない
 
「悪かったな、付き合わせちゃって」
「ううん。それは構わないけど」


予想外の出来事。
いったい、どんなふうに自分が載るのか想像つかない。
そもそも、使われるかどうかも分からないし。


「昔の仕事仲間?」
「ま、そんなとこ。
 俺がメイクやってて、押尾さんが変わらずカメラマンで。
 よくスタジオが一緒で同じモデルを担当してたから、世話になってたの」
「そうなんだ……」


それを聞くと、やっぱり凌太はメイクの仕事をしていたんだと実感する。

しかも押尾さんの様子からすると、すごく楽しそうな雰囲気もあったのに……。


「飽きちゃったから……なんだよね。辞めたのって」
「……ん。俺には向いてねぇから。割り切れねぇし」
「割り切る?」
「あ……なんでもない」


ぽろりと漏らした、意味深な言葉。
メイクの仕事に、割り切るも何もあるのだろうか。


「とりあえず、今は企画で商品考えるほうが楽しいの。メイクは玲奈の顔をいじれればそれでいい」


無理やりまとめられた感のある会話。

だけどそれ以上は、聞いてはほしくないような雰囲気もあって、私も突っ込むことをやめた。



話したくなったら、いつか自分で話すだろうしね。
 
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