好きになんか、なってやらない
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「待たせたな」
「いえ。先にいただいてますけど」
「ん。ビール一つ」
凌太が店に着くころには、まだ押尾の姿は来ていなく、20分遅れて押尾が到着した。
「酒も似合う男になったなー」
「って、そんなに子供じゃなかったでしょうよ。一緒に働いてたときだって」
「いやいや。ガキだって!モテていい気になってる子供」
「……」
図星をさされ、つい黙ってしまう凌太。
モテていい気になっていたのは、つい最近までそうだ。
玲奈に出逢って、ようやく変われたものだから……。
「あの時も、思いきり感情的になってたよな」
「……」
「あの時」と出されて、凌太はすぐに何の話なのか悟った。
出来れば二度と触れてほしくない。
思い出したくない過去。
「アイツもまだまだ無名のモデルで……。似合ってたもんなー、二人」
「やめてくださいよ。その話は」
「アイツも見てたぞ。お前らが載った掲載ページ」
それは、玲奈と載ったばかりの【アムアム】の一掲載ページ。
見ていてもおかしくない。
なんたって、アイツはそこの専属モデルだから……。
「会いたがってた。お前に。
連絡先も聞かれたしな」
「俺は会いたくありません」
「本当にか?」
「っ…当たり前じゃないっすか!」
思わず、バンッと手を打ち付けた。
そんな凌太を、押尾は冷静な目で見上げている。