好きになんか、なってやらない
 


     ***


「待たせたな」
「いえ。先にいただいてますけど」
「ん。ビール一つ」


凌太が店に着くころには、まだ押尾の姿は来ていなく、20分遅れて押尾が到着した。


「酒も似合う男になったなー」
「って、そんなに子供じゃなかったでしょうよ。一緒に働いてたときだって」
「いやいや。ガキだって!モテていい気になってる子供」
「……」


図星をさされ、つい黙ってしまう凌太。

モテていい気になっていたのは、つい最近までそうだ。
玲奈に出逢って、ようやく変われたものだから……。


「あの時も、思いきり感情的になってたよな」
「……」


「あの時」と出されて、凌太はすぐに何の話なのか悟った。

出来れば二度と触れてほしくない。
思い出したくない過去。


「アイツもまだまだ無名のモデルで……。似合ってたもんなー、二人」
「やめてくださいよ。その話は」
「アイツも見てたぞ。お前らが載った掲載ページ」


それは、玲奈と載ったばかりの【アムアム】の一掲載ページ。
見ていてもおかしくない。
なんたって、アイツはそこの専属モデルだから……。


「会いたがってた。お前に。
 連絡先も聞かれたしな」

「俺は会いたくありません」

「本当にか?」

「っ…当たり前じゃないっすか!」


思わず、バンッと手を打ち付けた。

そんな凌太を、押尾は冷静な目で見上げている。
 
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