好きになんか、なってやらない
 
「あの彼女は……正反対だな。アイツに」


カチッと煙草に火を付け、冷静に言葉を続ける押尾。
凌太はギュッと拳を握った。


「あえて選んだんじゃないのか?かぶらないように」
「違いますよ。俺は本当に玲奈を……」
「もう一度、彼女がお前とやり直したいと言っていたらどうする?」
「ありえないです。そんなこと」
「多分、アイツなら、近いうちにお前の前に現れるぞ」
「は?」


まさかの言葉に、間の抜けた声で相槌を打って顔を上げた。

煙草の煙を吐いた押尾は、どことなく冷ややかな視線で見下ろしていて……



「そういう女だ。アイツは……美空は」



アイツの名前を出して、呆れた声で言葉を返した。




美空……

今や、10代20代の絶大の支持を受けているトップモデル。

あの玲奈ですら、知っていた。


そして……


俺がメイクの仕事をして業界に携わっていた5年前の……



(凌太、大好き)



俺が愛していた女だ。
 
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